環境放射線等モニタリング調査とは |
1 概要 |
環境省では、比較的人による影響が少ないとされる離島などで、大気中の放射性物質*1を日々測定したり、 大気中の浮遊じん、陸水、土壌などを随時採取して分析を行っています。
この調査を行うことで、一般環境中の放射性物質の濃度の変化を監視することができ、 国内や海外で原子力災害や事故が発生したときや、海外での核実験が行われたとき、国内の影響を速やかに把握することができます。
なお、この調査は、環境省設置法(平成11年法律第101号)第4条第22号チ (「放射性物質に係る環境の状況の把握のための監視及び測定」)に基づき行っています。
*1 放射性物質とは、放射能(放射線を出す能力)をもつ物質の総称。放射線は、粒子線(α線、β線、陽子線、中性子線など) と電磁放射線(γ線、]線)に大別される。 *2 平成21年3月まで測定。
2 測定地点 |
測定地点の概要は表1のとおり。
表1 測定地点の概要 *3 平成21年3月まで測定。
地点名 所在地 標高 調査地点の状況 利尻
写真1
写真2北海道利尻郡利尻町仙法志神磯193
北緯45.07.30 東経141.14.3040m 利尻島の“リイシリ”とはアイヌ語で「高い山のある島」という意味。 標高1,721mの利尻山がそびえ立っている島で、北海道の最北端の稚内から 53km西の日本海上にある。 測定所は島の南西部の海岸から約3q内陸の利尻山の山麓に位置しており、周辺は豊かな森林や草原が広がっている。 竜飛岬
写真1
写真2青森県東津軽郡外が浜町宇三厩村字宇鉄字宇鉄山
北緯41.15.59 東経140.21.13106m 竜飛崎の津軽国定公園丘陵の北側斜面中腹。日本海と津軽海峡に挟まれ海岸から西側約700m、東側約350m。草地。 佐渡関
写真1新潟県佐渡市関204
北緯38.14.59 東経138.24.00136m 佐渡島北西部関岬に位置する。両津港から北へ約15km。北西方向は日本海に面し、南東方向は低木が広がる。 筑波*3 茨城県土浦市永井9877
北緯36.09.38 東経140.11.12155m 筑波山南東部の丘陵地域。土浦市北方約10km。周囲は広葉樹林。南西側は広葉樹が近接。 伊自良湖
*3
写真1
写真2岐阜県山県市長滝釜ヶ谷27-7-3
北緯35.34.14 東経136.41.51140m 岐阜市の北方約15km。伊自良湖の北西1.2km、伊自良川沿いの谷間に位置。周囲は桜等の広葉樹。 越前岬
写真1
写真2
写真3福井県丹生郡越前町血ケ平9字上丸山2-2
北緯35.58.53 東経135.58.5220m 福井県越前岬の東方約1qに位置する。西100mに保養所。大きな発生源はない。南西〜西〜北方向は日本海。 隠岐
写真1島根県隠岐郡隠岐の島町北方福浦1700
北緯36.17.19 東経133.11.0690m 隠岐諸島、島後北西部・福浦崎灯台から東200m。西郷港から北西15 km。付近は草地、低い松林。 蟠竜湖
写真1島根県益田市高津町イ2340-3
北緯34.40.54 東経131.47.5953m 島根県南西部・益田市の西方約4kmに位置する。南方500mに石見空港。西方50m以内に県道有。 梼原
写真1
写真2高知県高岡郡梼原町太郎川3757-2
北緯33.22.33 東経132.56.14790m 高知県北西部愛媛県境に近い梼原町の中心部から約2 km。山地頂上付近の森林を切開いた造成地。 対馬 長崎県対馬市厳原町上見坂公園内
北緯34.14.18 東経129.17.17390m 対馬南部・厳原町の北部高台の公園内に位置する。展望台・駐車場に近接。南方4.5kmに厳原港。 五島 長崎県五島市玉之浦町大宝1148
北緯32.36.11 東経128.39.3295m 五島列島南西部・福江島西端に位置する。福江市から南西20km。町営グラウンドに近接。 辺戸岬
写真1沖縄県国頭郡国頭村宜名真
北緯26.51.44 東経128.15.0260m 沖縄島北端辺戸岬灯台から150mに位置する。名護市の北東40km。海岸線から南東に300m。雑草地。
注 この表は、当省地球環境局が作成して公開している「酸性沈着モニタリング調査地点の
概要」の表から、 必要事項を抜粋して作成したものです。
3 採取方法と採取物 |
(1)自動測定器で採取
空間放射線(γ線)、空気中放射能濃度(α濃度、β濃度)及び気象データ(降水量、風向、風速)を、全ての測定所に 専用の測定機器を設置して日々自動的に測定しています。環境省や専門の分析機関では、そのデータを常時監視しています。
(写真提供:アロカ株式会社)
空間放射線検出部
大気浮遊じん集じん部
(およびα線・β線検出部)
空間放射線測定部
大気浮遊じん中放射能測定装置
(2)人の手で採取
測定所の周辺で、大気に浮遊している塵、陸水、土壌などを採集し、 大気環境中に存在する放射性物質の分析を行っています*4。これを「核種分析」と呼んでいます。
陸水の採取風景 土壌の採取風景
(写真提供:財団法人日本分析センター)
ゲルマニウム半導体検出器 90Srを分離精製するための
イオン交換樹脂カラム低バックグラウンドβ線
測定装置
*4 90Sr(ストロンチウム90)、137Cs(セシウム137)は放射化学分析,その他γ線放出核種についてはγ線スペクトロメトリーで定量している。
・ 90Srと137Csを選択して分析する理由 大気圏内の核実験により環境中に放出された放射性物質は時間の経過とともに自然に崩壊するが、90Srや137Csは、核分裂によって生成する量も多く半減期も長いので、長期間にわたり環境中に存在することになる(90Srの半減期:29年、137Csの半減期:30年、最後の大気圏内核実験は1981年)。 また、90Srは人体内では主に骨などに蓄積し、137Csは全身の筋肉などに蓄積することから、この2物質は人体への影響を見る上で重要な指標となっている。 ・ 放射化学分析について 物質中に含まれる放射性核種を、化学的処理によって分離・精製し,その放射能を測定して、その核種の種類、濃度などを知る分析法をいう。 ・ γ線スペクトロメトリーについて スペクトロメトリーとは、ある特定の放射(放射線、光、音)の強度分布を、その質量、エネルギー、運動量、波長、周波数、振動数などの特性を用いて分光学的に行う測定法をいう。 γ線スペクトロメトリーでは、放射性物質がそれぞれ固有のγ線エネルギーを持っていることを利用して、横軸にエネルギー、縦軸にそのエネルギーを持ったγ線の数をグラフで表すことにより、横軸に示される値から放射性物質の種類について、縦軸に示される値から当該物質の濃度が分かる。
分析は、文部科学省放射能測定法シリーズ7「ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」 (平成4年改訂)、同シリーズ「放射性ストロンチウム分析法」(平成15年改訂)および同シリーズ3 「放射性セシウム分析法」(昭和51年改訂)に準じて行っています。調査地点とモニタリング項目は次のとおり。
注1.大気浮遊じんは、放射能測定装置のろ紙上で吸引採取されたものをそのまま使用する。
調査地点
(周辺を含む)モニタリング項目 大気浮遊じん
(注1) (注2)大気降下物
(注2)陸水(注3) 土壌(注3) 利尻 ○ ○ B B 竜飛岬 ○ A A 筑波(注4) ○ C C 佐渡関 ○ ○ C C 越前岬 ○ B B 伊自良湖(注4) ○ A A 隠岐 ○ ○ C C 蟠竜湖 ○ B B 梼原 ○ B B 対馬 ○ A A 五島 ○ ○ A A 辺戸岬 ○ C C 計 12ヶ所
×4四半期分
=48検体4ヶ所
×4四半期分
=16検体A及びC
3ヶ所
3検体
B
4ヶ所
4検体A及びC
3ヶ所×2層
=6検体
B
4ヶ所×2層
=8検体
注2.大気降下物については、この4測定所限定とする。
注3.陸水及び土壌の採取は、6月から9月の間とする。なお、調査は10箇所の測定所を3つのグループにし、
Aグループ→Bグループ→Cグループの順に毎年実施している。平成21年度はCグループとする。
注4.平成21年3月まで測定
4 緊急時の測定間隔等 |
国内外での放射性物質による事故が発生したときは、その影響を速やかに把握する必要があることから、 通常時よりも測定間隔や集じん時間を短くして測定を行います。
測定モード ガンマ線 アルファ濃度、ベータ濃度 データ収集間隔 測定間隔 集じん時間 測定間隔 通常時モード 1時間 6時間 10分 1時間に1回 緊急時モード 2分間 1時間 10分 1時間に1回